味方

 

 

味方

 

 

私は大学生の時、早く子供を産みたい

と思っていた

 

家庭環境に恵まれず育った私は

子どもを産めば子どもにとって母親は絶対的なものだから

私にも味方ができると思っていた

 

虐待された子どもは親をかばう

どんだけ粗末にされても、人間として扱われなくても

親の傍にいたい

誰かに助けてほしいけれど

離れ離れになんてなりたくはない

お父さんとお母さんが優しくなってくれることだけ祈っている

 

そんな心理(だった)

 

まあそんなことを感じていたので私は

子ども

という存在を

味方

という存在だと当時の彼に言った

 

安直だった

 

彼は

「じゃあそこら辺の男と適当に子ども作って生きていけば」

と言った

 

俺はそのための道具じゃない

みたいなニュアンスで

 

その当時は愛する人の子どもがほしい

とは思わなかった

 

シングルマザーに育てられた私には

愛する人との子ども

なんて発想はなかった

 

誰かと一緒に子育てをするビジョンが持てなかった

 

当時の彼、友だちには家庭環境のことは言っていなかった

みんな私の家が母子家庭だなんて思ってもいなかった

と今は口を揃える

 

付き合っている人には言ってもよかったかな

と今になっては思うけれど

当時は重すぎる

と隠すことで必死だった

 

そのとき付き合っていた彼には

実家のマイナスなことは一切口にしなかった

 

結果的に振られたのだが、最後の言葉は

「自分の環境を自慢したいんでしょ」

だった

 

そのとき自分が間違っていたことを痛感した

最後に言われたあの一言は死ぬまで忘れないだろう

 

悔しかったので

「何も知らない癖に」

とだけ言い返してやった

 

強がっていた自分の蒔いた種だな

と思って

縁がなかったからしょうがないと忘れることにした

 

その後何年かして私は病気になり

今の旦那に全部話してしまった

 

旦那は逃げることはなかった

でも私の背負ってきた十字架を彼にも背負わせてしまうと

罪悪感に苛まれた

 

愛する人との子どもがほしい

と思った時には

子どもができなくなってしまった

 

旦那という味方と引き換えに

私の間違っていた子どもという味方を神様は与えてはくれなくなった

 

 

続ーーーー